「ディスクゴルフコースを作りたい」
ディスクゴルフを始めてから多くの人と関わるなかで、このような言葉を聞く機会が何度かありました。家の近くにディスクゴルフコースが無い、地元の土地を活用したい、オリジナルのコースを考えたい…思いはそれぞれですが、コースが増えるということはそれだけでディスクゴルフに触れる人や機会を増やす普及活動につながります。今回はそんな思いを実現された方の1人、牛尾幸代さんにお話を聞く機会をいただきました。
ぶぶるパークみかもディスクゴルフコースが出来るまで
徳島に「ぶぶるパークみかもディスクゴルフコース」というコースがあるのをご存知でしょうか?まだコースの少ない四国に2019年完成した新しいコースであり、梶山学選手を招いた練習会なども開催され精力的に活動されているスポットです。
以前、池の真ん中に浮かぶ小島にディスクゴールがある、名の通り「本当のアイランド」の写真を見つけ、なんて面白そうなコース!と感動したのがこの場所を知ったきっかけだったのですが、その後「ぶぶるパークみかもディスクゴルフコース」を活動拠点とするみよしディスクゴルフクラブさんと梶山学選手との練習会に関することでご連絡を取るようになり、今回お話を伺うに至りました。
ぶぶるパークみかもとはどんな場所?
コースがあるのは徳島県の中でも香川県にほど近い西側のエリア。徳島駅から車で1時間ほど、香川の高松からも1時間半ほどで到着します。日本を代表する大河の1つである吉野川のほとりにあり、国交省の「水辺の楽校事業」の一環として整備された水辺の公園がこのぶぶるパークみかもです。
2年前はゴールもティーも無い公園であったぶぶるパークみかもですが、今では約20m〜60m台の距離が楽しめる9ホールのコースがあり、月に一度のマンスリー大会・初心者講習会もたくさんの方で賑わう活気あるコースとなっています。
そしてそのコース作りの発起人となったのが、今回お話を伺った牛尾さんです。
ニュージーランドでのディスクゴルフとの出会い
牛尾さんとディスクゴルフとの出会いは、前に住まわれていたニュージーランドでのことでした。
ディスクゴルフに出会ったのはニュージーランド移住中2016年ごろ、現在MIYOSHI DISC GOLF CLUB のメンバーであるタイラーにクイーンズタウンで出会い、連れて行ってもらったのがきっかけでした。初めてのコースはクイーンズタウンの街にある「クイーンズタウンガーデン」。よくわからないまま、ディスクを渡されて、ラウンドしました。下手すぎて、1ホールで10投ぐらいしていたので、第一印象は「面白くない」でした(笑)
最初から「ハマる」感覚ではなかったという牛尾さん。それでも1回切りで終わらなかったのには、ニュージーランドの恵まれたディスクゴルフ環境にあるのかもしれません。
クイーンズタウンガーデンの良さはアクセスと手軽さ。マチのほぼ中心にあり、観光客や地元の人にもなじみのある公園で、ディスクさえ持っていればすぐプレーできます。町の中にディスクを売るお店もあったので、そこで購入してラウンドできる手軽さは良かったです。私の職場がすぐ横だったので、仕事前の時間に小1時間遊んでから仕事に行きました。ニュージーランドで回ったコースは2か所だけですが、両方とも手軽にラウンドできるアクセスの良さが印象に残っています。
日本はやはりマイナースポーツなので、手軽にプレーできるところが少ないかと思います。ニュージーランドにはディスクゴルファーはそんなにたくさんいる方ではないと思いますが、For funでプレーする人が多い印象です。手軽にできるスポーツという感じでした。
帰国後、日本で改めてスタートしたディスクゴルフ
ニュージーランドで出会いこそすれ、どっぷり浸かることはなかったディスクゴルフ熱に火がついたのは日本に帰ってきてから。
帰国後、ディスクゴルフのことは忘れてしまっていたのですが、たまたま旅行先で友達とフライングディスクを投げて遊んでいたときに、ディスクゴルフを思いだして、それっぽく遊んでいたら盛り上がってしまい、そこからネットでいろいろ調べ、D.D.Jamさんへディスクを買いに行ったのがきっかけです。そのあとは地元の友達と一緒に近くの公園で投げて遊んでいました。高知にディスクゴルフコースがあるということで、単身でマンスリーにも乗り込みました(笑)そこで皆様に親切にしていただいて、いろいろ教えていただき、一気に熱が過熱した感じです。
高知県のコース「おおなろ園」へ足を運んだり、公園で投げていたという牛尾さんですが、コースを作りたいと思ったきっかけや、考えに至った理由はどんな点にあるのでしょうか?
始めた当初は近所のグラウンドにトラベラーを持参して投げていましたが、グラウンドだけあってディスクの痛みが激しいのと、ただ遠投を繰り返していたのでもっと投げやすい場所がないかといつも考えていたところ、タイラーから「ぶぶるパークが最適」と教えてもらい、そこでみんなで集まって投げました。ぶぶるパークは敷地も広いうえ、視界もよく、利用者が少ないので現在これ以上の場所はないと思っています。
ディスクゴルフをするのにはちょうど良い場所が見つかったのですが、仲間が集まれる日もばらばらで、もっとディスクゴルフを身近に感じて、いつでもだれが来てもできるようにすることを考えたときコースを作りたいと思い始めました。
ぶぶるパーク以外の場所の選択肢もありましたか?という質問に「これ以上の場所はなかった」と言う牛尾さん。場所の有無というコース新設にとって最初で最大の関門がクリアになっていたことが、この後の動きを加速させる一因だったのでしょう。
コース作りに向けての動き
具体的なコース設置に向けての動きについて伺っていきます。
MIYOSHI DISC GOLF CLUBの発足
コース作りにあたり、まずはそれまで練習をしていた友人同士のメンバーから「クラブチーム」に発展させたそうです。
はじめは友達でスタートしました。私もディスクゴルフの経験がほぼ初心者だったので、ただ休みの日に集まって楽しく投げるという感じでした。クラブとして名称をつけたのはコースを作ると決めてからだったと思います。
現在MIYOSHI DISC GOLF CLUBは会長・代表がいて、メンバーはどなたでもなれるようなシステムです。活動していることは、毎月の体験会&マンスリー、スポ少ディスクゴルフ体験会などがメインです。その時に参加してくださるメンバーも地元の方や県外でプレーされている方など様々です。
クラブにすることで結束感も出て、情報発信などもスムーズに行えそうですよね。クラブはもちろん自由に作ることが出来ますが、申請をするとJPDGAの公認クラブとして活動することも可能です。興味のある方はJPDGAのサイトをご覧ください。
公園から許可を得るまで
一番気になるであろう、公園へのコース設置許可のお話について伺っていきたいと思います。
まず、ぶぶるパークを管理している、三好郡東みよし町役場に相談へ行きました。ディスクゴルフコースを作りたいと相談に伺ったとき、対応してくださった職員の方にとても興味を持っていただいて、その足でぶぶるパークへディスクを投げに行きました(笑)それもあって、コース設置のお願いに行ってから、許可をいただいて設置まで1年ぐらいだったかと思います。
管理は東みよし町ですが、河川公園は国土交通省の管轄ですので、東みよし町を通して書類を提出しました。また、吉野川河川敷は雨季や台風による増水・洪水が予想されるので、ティー、バスケットは迅速に撤去できるように設置することが条件で、撤収計画書なども作成して提出いたしました。
作って終わりではなく、その場所で永続的に運営していくということまで考えると、役場の方にまずは理解を得る、味方になっていただくというのは、他のコース作りにおいても非常に大切なことのように思います。
また、水辺のコースということでその水害対策というお話も出てきましたが、コースのある場所によっては樹木の保護や、建物などへの危険の有無など、人はもちろんそれ以外の安全対策も重要になってくるので、エリアの特性に応じた計画がポイントになりそうです。
コース設計と資金調達
ぶぶるパークみかもは、視界の良い開けたスペースが中心の公園。コースを見ると障害物が少なそうで一見シンプルですが、道路や木、池などを利用し緩急をつけられており、ショートでありながらも皆さんが楽しめそうなコース設計になっています。
地元メンバーにコースレイアウトの知識、経験が全くなかったのでメンバーを通じて、経験のあるかたにお願いいたしました。コースを作るうえでのテーマは、「初心者が投げても楽しいコース」このテーマは、東みよし町エリアの方々は、ディスクゴルフを知らない人がほとんどなので、まずは楽しんで投げてほしい!という思いからです。何度か下見して、実際投げて、いろんな方の意見も交えて、今のコースが完成しました。あと、公園がオープンなので、設置後ゴールを持っていかれることはないか不安で(笑)よく確認にいっていました。
コース作りのポイントは“楽しんで投げれる”事だったいうぶぶるパークみかもコース。実際のコースは是非足を運んで体感してみてくださいね。
コースを作るうえでもう1点気になるポイントは、費用の捻出かと思います。今回コースを作るにあたって、寄付金を募られたと伺いましたが、どのように集められたのでしょうか?
ありがたいことに、たくさんの方から寄付金をいただきました。地元の方々には、直接お会いし、ディスクゴルフというものを説明させていただきました。facebookのMIYOSHI DISC GOLF CLUBページでも寄付のお願いをしたところ、全国よりお心遣いをいただきました。Club Jrの吉田社長にもゴール購入で大変お世話になり心より感謝しています。おかげさまで、9ホール、9基のゴールを寄付金で賄うことができました。
コースというのは、地元の方が運営・管理をされていることが多いと思いますが、その利用対象は誰でも利用できるものである場合がほとんど。共有物を作るのですし、ゴールやティーの設置にしても決して安いものではありません。今回のように寄付金を上手く募ることは、今後同じようなケースの場合参考になるポイントの1つではないでしょうか。
費用面も解決し、無事に運営へと舵を切ったぶぶるパークみかも。今回、コースの設置に関しては地元のメディアにも取り上げられており、注目の高さが伺えます。
徳島新聞朝刊 読売新聞徳島版
徳島新聞朝刊 朝日新聞朝刊
運営、そして今後のぶぶるパークみかもについて
こうして完成したぶぶるパークみかもディスクゴルフコース。その後活動はMIYOSHI DISC GOLF CLUBのFacebookページを見て頂くと良くわかると思いますが、非常に精力的に活動をされています。具体的にはこのような活動でディスクゴルフ仲間が増えているようです。
地元のスポーツ少年団対象に体験会を開催、月1回の体験会マンスリーは今後も続けていく予定です。参加者は県外のプレーヤーの方も来てくださり、地元は初心者ばかりなので、教えていただいたりしております。最近は親子連れの参加者も多く、その方がまた違う友達を連れてきてくれたりします。つながりを実感中です。また、今年はコロナウイルス感染症の影響で中止になりましたが、徳島県シルバー大学校・健康コースでディスクゴルフが講義の1つに採用されました。(来年度開催予定)
場所が出来るということは、ディスクゴルフを知る人やプレーヤーが増えるのはもちろん、地元同士のつながりが出来たり、他地域との連携を持てたり、多くの架け橋になっていくことを強く感じました。
さらなる発展を遂げるぶぶるパークみかも。今後の展望や目標についても伺ってみました。
やはり地元へのディスクゴルフの普及が一番の目標ですので、地元の方にもっと知っていただけるように、体験会を続けていきたいと思っています。また近隣の小中学校にディスクゴルフ体験会の実施ができるようなシステムを作りたいと思っています。ほか、プロのプレーを間近で見ていただけるような機会(大会・講習会の開催)もふやしていきたいと思います。
ここでディスクゴルフに出会った子供たちが、将来ぶぶるパークみかもを盛り上げてくれる存在になることを想像したらそれほど素晴らしいことはありません。これからの活動が非常に楽しみですね。
最後に、これから将来コース設営を考えている方へ一言を頂きました。
やはり、一緒に頑張ってくれる仲間の存在と、ディスクゴルフへの熱意だと思います。私たちはラッキーなことに場所はすぐ見つかりましたが、設置までの間はたくさんの方のご協力があったおかげでスムーズに進むことができたと思います。また公園を利用している方たちとコミュニケーションを一杯とる。仲良くなってディスクゴルフというものが何なのかを知ってもったことで、コースができた後もトラブルなく楽しませていただいております。
…牛尾さん、今回は貴重なお話をお伺いさせていただき、本当に有難うございました。
日本には約50の公認コース、その他にもぶぶるパークみかものようなコースがたくさんあります。とはいえ海外のようにどこに行ってもコースに巡り合う充実した環境ではなく、まだまだ発展途中、これからの展開が楽しみな競技です。今後、コースを作りたい、地元にコースが欲しいという方にとって、牛尾さんのお話が、何かのきっかけや1つの参考になれば幸いです。